10月、シャトル織機を使ってものづくりを行っている仲間の経営者さんたちを誘い、オランダへ行ってきました。
目的はオランダ南部・ティルブルグにあるテキスタイル・ミュージアム訪問とミュージアム内にある「テキスタイル・ラボ」の視察です。
参加したのは 倉敷帆布の武鑓さん、会津木綿の山崎さん、トヨタ産業技術記念館の成田さん、テキスタイルデザイナー楠野さん、そして、豊橋の芳賀さんと私です。
ミュージアムのあるティルブルグは、オランダ第6の都市。首都アムステルダムから車で1時間ちょっとの郊外にあります。
毛織物の産地として栄えた都市で、最盛期は1950~60年代
13の毛織物、綿織物工場がありましたが、時代と共に仕事が中国へ流れ、一気に衰退。工場はすべて廃業したといいますから、日本と似たような状況だったことが分かります。
その廃業した工場跡を活用して設けられたのがテキスタイル・ミュージアムです。その中にある「テキスタイルラボ」を視察し、大いに刺激を受けました。
ここはラボという名の通り、小ロットで生地開発できる研究所です。周辺から集めた織物機械を使い、専門家に教えてもらいながら、自分で作りたい生地を制作できます。
ミュージアムにはかつて活躍した伝統的で希少な織機が展示され、織物技術の変遷を知ることができますが、ラボに設置されている多くはコンピュータと連動した割と新しい機械です。
ここにあるのは機械だけではありません。デザイナー、アーティスト、学生、そして、繊維業界以外の異業種・異分野から集まった"新しい人たち"が生地の開発や商品化のための実験に取り組んでいます。
ラボには職人やデザイナーといった生地を作る専門家のほかに、大学でテキスタイルを専攻する学生のインターンシップもいて、年齢も幅広いです。
専門外の人でも新しいテキスタイルの開発・商品化が自由に行えますが、まず、ラボの審査を受ける必要があります。どんなものを作りたいのか、考えや目的をまとめたレポートを提出するのです。
ラボは、新しい商品を開発しようという目的意識と意欲を明確に持つ人を受け入れるという姿勢で対応しています。
制作する生地に関しても「試作のみ、量産はしなくてよい」という考え。
試作できるのは200メートルほどの生地までで、それ以上は対応しないという姿勢を貫いています。
量産をするための場ではなく、あくまで実験の場であるということ。
量産することよりもオンリーワンのものづくりに特化し、
目的を持って訪れる人には広く門戸を開き、ラボにいる"新しい人たち"と関わることで、ものづくりを志す人が成長するための実験場といったところでしょうか。
見学ができるだけでなく、ここでものづくりを経験すれば"新しい人たち"と出会え、そこから新しいものづくりに向けた縁も生まれる仕組みが機能しているわけです。
日本のこれからのものづくりの形、そして仕組みを作っていく上で、オランダのテキスタイル・ラボの取り組みから数多くの刺激とヒントを得ることができました。
(エニシング 西村)